豊和工業株式会社

対処すべき課題

経営環境、経営戦略及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

①中期経営計画2年目の振り返り
昨年度よりスタートした3ヶ年の中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期、以下「本計画」)におきましては、これまでの安定路線から成長路線に切り替え、スピード感と戦略性のある経営により「企業価値の向上」に向けた取り組みを推進してまいりました。しかしながら、エネルギー価格や原材料価格の高騰、工作機械関連での自動車業界のEV需要伸び悩みや中国市場の低迷による設備投資需要減退、特装車両事業において清掃車で使用するトラックシャシの入手困難な状況が継続するなど、外部環境の大きな変化により業績に影響が生じました。
その結果、2024年3月期の実績は、以下の通りとなりました。連結売上高はほぼ予想通りとなりましたが、火器で円安の進行により輸出採算が改善したことなどにより、連結営業利益は期初予想値を上回る結果となりました。しかしながら、工作機械関連事業と建材事業で減損損失を計上したことによりROEはマイナスとなりました。
財務目標 期初予想値(2024年3月期) 実績値(2024年3月期)
連結売上高 198.0億円 197.8億円
連結営業利益 1.8億円 3.8億円
ROE 1.2% △5.0%
②中期経営計画最終年度となる2025年3月期の見通し
本計画の最終年度となる2025年3月期につきましては、主要な顧客である自動車関連業界や中国からの工作機械等の受注回復は不透明な状況が続くことが予測され、当社の工作機械関連事業は引き続き厳しい状況が続くと予測されます。一方、世界的な安全保障状況の変化に対応して政府より防衛産業基盤強化策が打ち出されたことなどにより、当社の防衛関連事業は拡大することが見込まれます。また、特装車両事業もトラックシャシの入荷が安定化することで販売台数の増加が見込まれます。
このような状況により、2025年3月期については連結売上高241億円、連結営業利益7.6億円、ROE3.9%と予想しており、中期経営計画の目標値(連結売上高248億円、連結営業利益20億円、ROE8.0%)と乖離が生じる見通しです。
当社グループといたしましては、事業環境の大きな変革期であると認識のもと、強弱をつけた経営資源の投入による経営効率の最適化により、事業環境の変化に適応した事業基盤を構築してまいります。
財務目標 2023年3月期
中計初年度実績
2024年3月期
中計2年目実績
2025年3月期
中計最終年度予想
連結売上高 197.3億円 197.8億円 241.0億円
連結営業利益 4.5億円 3.8億円 7.6億円
ROE 3.1% △5.0% 3.9%
③本計画の戦略の骨子
本計画では、スピード感と戦略性のある経営により、ステークホルダーの皆様に認めて頂ける企業価値の向上を実現するため、以下の基本方針を掲げております。
基本方針

・投下資本を意識し、スピード感と戦略性のある経営の意思決定

  全社戦略

・事業ポートフォリオ戦略の考え方に基づき、強弱をつけた経営資源の投入による経営効率の最適化

事業戦略 ・成長領域へのあくなき“挑戦”による稼ぐ力の向上、継続領域における競合との“差別化”
・ものづくり力の向上による収益力の改善
財務戦略 ・利益増に応じた株主還元の実現
- 期間中の配当性向30%、配当20円/株以上
ESG経営 ・重要課題の実現に向けた経営への落とし込み
- 脱炭素化や防災・減災社会を機会と捉えた製品開発
- 人材育成、ガバナンス強化など経営基盤の強化
④各事業にて優先的に対処すべき課題
本計画においては、事業ポテンシャルとキャッシュの創出力から、以下の通り事業を4象限に分類し、特に事業ポテンシャルが高く、伸びしろのある事業領域を「投資による成長」領域と位置付け、リソースの積極的な投入により、稼ぐ力を強化します。また、自力で稼いだキャッシュを再投資に回していく形で成長させていく事業領域を「自律成長」領域と位置付けており、事業のポテンシャルを活かし、中長期的に持続的な成果を挙げていくための投資を行っていく方針です。
a.投資による成長領域
対象事業は工作機械関連/工作機械の新領域・火器および建材で、それぞれの戦略は以下の通りです。
・工作機械関連/工作機械の新領域
工作機械の主要市場である自動車関連では、成長分野であるxEV領域における国内外でのマルチパスウェイの流れに対応した加工設備の受注獲得に向けた営業活動を強化するとともに、自動車関連以外の新たなマーケットとして、電子部品、農業機械、建設機械関連の顧客などへの提案活動を積極化して、ビジネスの拡大を目指してまいります。また、中国、インドネシアの海外子会社との連携による海外市場での受注活動の強化と、成長市場であるインドにて、新たな販売、エンジニアリングおよびサービス機能を併せ持つ拠点の設立に向け、活動を展開いたします。
更に、xEV部品加工向けに最適な次世代マシンの開発、スマートファクトリーを実現する提案として、自律制御ロボット(AMR)を活用した自動化システムのパッケージ構築に取り組んでまいります。
・火器
官民両輪の継続する需要増加に対応すべく、生産能力増強のみならず、従来の工法にとらわれない革新的な工法や設備を採り入れた、高い生産性と高品質製品を生み出す革新生産ラインの構築を推進しています。
官需部門につきましては、2022年末に公表された防衛三文書にて防衛力整備の7つの方針が示され、防衛産業基盤強化策が打ち出されました。当社が扱う装備品はそれに合致することから、需要が増加しており、主力製品の小銃につきましては、当期より、前期比2.7倍増の販売目標を掲げ事業を展開し、25年度以降の更なる需要増に備えた増産体制を今年度中に構築する計画であります。
スポーツライフル部門では、主要マーケットである北米のライフル市場は、コロナ禍前は年間100万丁程度の市場規模でしたが、コロナ禍を境にアウトドア志向が高まり、年間120~140万丁の市場規模に成長しました。今年度はその反動による市場の冷え込みがありますが、2027年度にかけて市場規模が続くとみられています。今年度は北米市場に対し、販売戦略策定に資するマーケティング活動を実施すると共に、同地域向けにSNSアカウントを立上げ、情報を発信しブランド力の向上を図ってまいります。
・建材
防音サッシ分野につきましては、高度化される住宅省エネ基準に適合する、防音性能を有した断熱サッシの開発を推進し、高付加価値化による製品差別化を図ります。また、生産面では、年間を通じた作業の平準化や作業改善による生産性の向上を図り、低コスト・短納期のものづくり体制を構築してまいります。
防水製品につきましては、営業面においてはSNS等の活用・広告宣伝・展示会出展などのインサイドセールスの継続による市場での知名度向上、ターゲットとする業種・業者を絞り込んだ訪問営業の強化、OEM提携先への販売支援活動による販売網の拡大を図ってまいります。
また、開発面においては、止水高さが3mであったスイング式防水扉のラインナップを拡充し、5mの止水性能を持つ大型防水扉を開発しました。2024年6月より販売を開始し沿岸部・河川沿いの公共施設や、防衛施設のBCP対策などへ提案しております。また、デジタル化社会に向けたスマート防水製品の開発を進めております。他社に対し更なる優位性を持った製品を開発し売上の拡大を推進してまいります。
b.自律成長領域
対象事業は工作機械関連/空油圧機器・電子機械および特装車両で、それぞれの戦略は以下の通りです。
・工作機械関連/空油圧機器・電子機械
空油圧機器につきましては、インターネット販売の開始や、昨年度発売した、パワーチャックの新製品に新たなサイズを追加することにより、市場ニーズへ幅広く対応できるようにすると共に、生産能力拡大のための製造ライン自動化投資を完了し、受注対応力も強化することで、マーケットシェアの拡大を図ります。
電子機械につきましては、当社の主要マーケットである中国の設備投資需要リスクへの対応として、国内ユーザーへの営業を強化いたします。また、世界的に成長が予想されている、MLCC(積層セラミックコンデンサ)市場への参入に向けた新製品を開発し、製品ラインナップの拡充を図ります。
・特装車両
特装車両事業は、主力の路面清掃車が国内においてトップシェアを占め、業界内で良好な地位を築いております。当面は、盤石な国内事業基盤を維持することが重要ですが、同時に中長期にわたり持続的な成長を図る観点から、先端技術の開発と海外展開を推進してまいります。
具体的には、IoT、AIの活用による製品高付加価値化、脱炭素社会対応に向けたEV化等の製品開発の更なる推進、ならびに先端技術を盛り込んだ自律走行清掃車の開発を推進します。リチウムイオンバッテリー搭載の公道走行可能なEVタウンスイーパーを今期中に市場投入する予定です。
海外展開につきましては、東南アジア市場への事業展開に向けたビジネスモデルの構築に注力するなかで、インドネシアを第1ターゲット国と定めて、現地市場開拓、現地企業とのアライアンスを進める予定です。