豊和工業株式会社

対処すべき課題

経営環境、経営戦略及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

①前回中期経営計画の振り返り
当社グループは、前回の中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)におきまして、「ものづくりを通じた企業価値の向上と持続的な成長を目指し、構造改革を通じて「企業競争力の強化」と「収益力の抜本的な改善」に取り組むことを基本方針とし、最終年度の目標として、連結売上高235億円、連結営業利益16億円、連結営業利益率6.5%を掲げ、経営改善に取り組んでまいりました。
しかしながら、2022年3月期の実績は以下の通りであり、中計最終年度の目標を達成するには至りませんでした。
財務目標 目標値(2022年3月期) 実績値(2022年3月期)
連結売上高 235億円 196.9億円
連結営業利益 16億円 9.8億円
連結営業利益率 6.5% 5.0%

前回の中期経営計画における成果と、積み残し課題は以下の通りであります。

a.前回の中期経営計画における成果
・生産性向上とコスト改善による損益分岐点の引き下げ(赤字になりにくい経営体質への転換)
・海外不採算子会社の閉鎖・収益体質の改善黒字化、国内不採算子会社の整理統合
・部門間人材移動・マルチタスク化の推進による固定費の流動化
・遊休資産の活用による不動産収益の増強(2021年3月期に賃貸マンション3棟・介護施設2棟の建設・稼働を開始)
b.前回の中期経営計画における積み残し課題
・事業ポートフォリオの抜本的見直しによる経営資源の再配分(成長領域へのメリハリのある投資)
・コロナ禍において加速した工作機械関連における環境変化への対応
・資本市場の変化の中での有効な事業価値向上策の打ち出し
②新中期経営計画において目標とする経営指標および2023年3月期の見通し
このため、今般当社が策定した新たな3ヶ年の中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期、以下「本計画」)におきましては、これまでの安定路線から成長路線に切り替え、スピード感と戦略性のある経営によりステークホルダーの皆様に認めて頂ける「企業価値の向上」を実現するべく、最終年度の2025年3月期におきまして、連結売上高248億円、連結営業利益20億円、ROE8.0%の目標を掲げております。
一方で、本計画の初年度となる2023年3月期につきましては、連結売上高197億円、連結営業利益2.3億円、ROE1.4%を予想しており、2022年3月期に比して、大幅な減益となることを予想しております。
財務目標 2022年3月期
実績
2023年3月期
中計初年度予想
2025年3月期
中計最終年度予想
連結売上高 196.9億円 197.0億円 248億円
連結営業利益 9.8億円 2.3億円 20億円
ROE 6.4% 1.4% 8.0%
このことは、クルマの電動化の流れの中で、工作機械関連で内燃機関向けの設備投資需要が減少していることや、サプライチェーンの停滞・原材料の高騰といった市場環境の変化に対し、依然として当社グループの企業体質がそれに耐えうる十分強固なものになっておらず、経営改革が道半ばの状況にあることを示しているものであります。
このような状況の中、当社といたしましては、本計画の戦略骨子に基づき、各事業年度で着実に企業改革を進め、目標数値の達成を目指すことが必要と認識しており、そのためには、成長分野を見極めて、メリハリのある事業ポートフォリオ戦略を展開し、事業全体の経営効率を向上させていくこと、それに見合った組織体制を構築することが重要と考えております。
③本計画の戦略の骨子
本計画では、スピード感と戦略性のある経営により、ステークホルダーの皆様に認めて頂ける企業価値の向上を実現するため、以下の基本方針を掲げております。
基本方針

・投下資本を意識し、スピード感と戦略性のある経営の意思決定を実施

  全社戦略

・事業ポートフォリオ戦略の考え方に基づき、強弱をつけた経営資源の投入による経営効率の最適化

事業戦略 ・成長領域へのあくなき“挑戦”による稼ぐ力の向上、継続領域における競合との“差別化”
・ものづくり力の向上による収益力の改善
財務戦略 ・利益増に応じた株主還元の実現
- 期間中の配当性向30%、配当20円/株以上
ESG経営 ・重要課題の実現に向けた経営への落とし込み
- 脱炭素化や防災・減災社会を機会と捉えた製品開発
- 人材育成、ガバナンス強化など経営基盤の強化
④各事業にて優先的に対処すべき課題
本計画においては、事業ポテンシャルとキャッシュの創出力から、以下の通り事業を4象限に分類し、特に事業ポテンシャルが高く、伸びしろのある事業領域を「投資による成長」領域と位置付け、リソースの積極的な投入により、稼ぐ力を強化します。また、自力で稼いだキャッシュを再投資に回していく形で成長させていく事業領域を「自律成長」領域と位置付けており、事業のポテンシャルを活かし、中長期的に持続的な成果を挙げていくための投資を行っていく方針です。
a.投資による成長領域
対象事業は工作機械関連/工作機械の新領域・火器および建材で、それぞれの戦略は以下の通りです。
・工作機械関連/工作機械の新領域
自動車関連の成長領域であるxEV領域への進出を強化します。クルマの電動化によるxEV化の進行の中で、e-Axleケース・バッテリーケースなどの中大型ワーク対応機への需要が増加しており、これらのxEV向け部品への対応を最重点対象とし、当該領域での事業戦略を見極め、製品ラインナップ・バリエーションを整備することにより、収益の極大化に注力してまいります。
また、スマートファクトリー化への取り組みについても、外部とのアライアンスも視野にソフトウェア開発・ネットワーク構築のケイパビリティを向上させ、当社の持つ豊富なシステムアップ経験に基づくエンジニアリング力、現在開発を進めている当社製品「HOMS-i」によるシステムインテグレート力を強化し、当該領域でのビジネスモデルの確立に注力してまいります。なお、工作機械の既存領域については、市場環境から見て事業ポテンシャルは低いものの、生産性を改善しながら、エンジン・ミッション部品の加工機・改造需要や、足回り部品を中心としたシャーシー系等、その他自動車部品の需要を取り込んでいくことで、工作機械全体の収益性の維持・向上を図ります。
・火器
設備増強による生産性の向上・生産能力の拡大を図ります。火器については、地政学リスクの顕在化とそれによる国防意識の高まりにより、当社が製造する20式5.56mm小銃・120mm迫撃砲RTなどの防衛装備品については、国産メーカーとして、今後これまで以上に重要な役割を担っていくことが想定されます。
また、海外向けスポーツライフルについても、防衛省との長年の取引によりノウハウを蓄積した高い命中精度を背景とし、北米を中心に海外市場でのHOWAブランドへの信頼性が浸透しつつあり、今後需要の伸びが期待できます。このような事業環境のもと、防衛装備品の安定供給による盤石な後方支援体制を構築し、海外向けスポーツライフルの拡販との両輪で収益力の抜本的な改善を図るため、最適QCD体制の確立と省人化生産ラインの構築による生産性向上・能力増強投資を進めてまいります。同時に、高付加価値製品の新規開発・投入により、海外向けスポーツライフルの売上・収益拡大にも注力してまいります。
・建材
防音サッシの生産性向上・高付加価値化による製品力向上と、防水製品の市場プレゼンス拡大を図ります。防音サッシ分野については、防音性能の向上を伴う断熱サッシの開発による製品差別化、防水製品については、他社へのOEM委託等の外部アライアンス強化・スマート防水製品開発や製品群のラインナップ拡充と、それを組み合わせたシステム提案を充実させるため、必要な人的資本の投入、生産性向上や製品開発のための投資を積極的に実施します。
b.自律成長領域
対象事業は工作機械関連/空油圧機器・電子機械および特装車両で、それぞれの戦略は以下の通りです。
・工作機械関連/空油圧機器・電子機械
空油圧機器については、生産能力拡大と製造ライン自動化のための設備投資により、受注対応力強化と製品競争力向上を図ります。電子機械については、次世代通信規格5G、IoT、車載用電子部品の需要拡大により、当社が主要な販売エリアと位置付ける中国・台湾において仮積層機向け需要の拡大が見込まれるため、需要拡大に対応できる製品ラインナップを充実させることが重要であり、インダクタ製品の小型化ニーズへの対応、車載ECUを中心に成長が見込めるLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)市場に対応した高精度仮積層機の提案ならびに海外アフターサービスの充実により既存領域を強化します。また、既存領域より市場規模が大きい各種センサ、フィルタ・モジュール等の高周波部品への対応のため、高生産仮積層機の投入により、電子部品市場における新たな顧客の獲得を目指すとともに、パワーインダクタ一体成形機の開発により、電子部品モールディング装置市場への参入を目指します。
・特装車両
特装車両事業は、主力の路面清掃車が国内においてトップシェアを占め、業界内で良好な地位を築いております。当面は、盤石な国内事業基盤を維持することが重要ですが、同時に中長期にわたり持続的な成長を図る観点から、先端技術の開発と海外展開を着実に進めてまいります。
具体的には、国土交通省提唱の「i-Construction」に適合するIoTを利用した路面清掃車ドライバー支援システム・IoTコネクテッドサービスの開発や、環境に配慮した産業用清掃機・路面清掃車のEV化・屋外EVロボスイーパーの自律走行システムの開発など、先端技術を融合させた製品開発を進めます。
同時に、東南アジア市場への事業展開に向けたビジネスモデルの構築にも注力し、中長期的に新たな収益源を獲得していくため、市場調査をすすめるとともに、アライアンスの可能性についても検討してまいります。